2011年にアメリカでNIPT(non-invasive prenatal genetic testing、無侵襲性出生前遺伝子学的検査)が開発されました。日本には2013年に導入されました。

妊婦からの採血だけで、母体の血液中を流れる【胎児のDNA】の断片を解析し、従来よりも精度の高い診断を行うことができるこの検査は、周産期医療に大きなインパクトを与えました。

従来の出生前診断から飛躍的に変化したこの検査を、マスコミは「新型」出生前診断と名付け大々的に報じました。

新型出生前診断とは妊婦さんの血液中に含まれるわずかな胎児DNA断片を分析することにより、胎児の染色体異常を調べる無侵襲的検査です。

特徴は血液検査という安全な検査でありながら、高精度(感度・特異度・陽性的中率)に特定の染色体数的異常を検出できることです。

結果が陰性となった場合の陰性的中率はどの年齢でも99.9%以上と非常に高く、羊水検査と同等の確かさがあります。そのため、不必要な侵襲的検査を避けることができます。

陽性となった場合は年齢にもよりますが、高齢妊娠であれば,85%程度以上の陽性的中率を示します。しかし、確定診断を得るには羊水検査・絨毛検査といった侵襲的検査法による検査が必要とされます。

新型出生前診断は妊娠10週以降から検査ができます。この他の出生前診断と比べると早くから検査が可能であるということも重要な特徴です。

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とある病院で7740名の妊婦がNIPTを受けました。

そのうちの142名が陽性と判定されました。

さらに確定診断である羊水検査で陽性となったのは113名でした。

その113名のうちの110名、実に97%の妊婦がその後妊娠中絶を選んでいます。

この結果を貴方はどうとらえるでしょうか。

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出生前検査を受ける上での注意点

NIPTで分かるのは最も一般的な染色体異常である21番染色体トリソミー(ダウン症候群)18番染色体トリソミー(エドワーズ症候群)および13番染色体トリソミー(パトウ症候群)、性染色体(XおよびY)の一般的異常のみです。

すなわち、この検査によってすべての異常が分かるわけではないということは、検査を受けるにあたって十分に注意と理解をしておかなければなりません。

お腹の赤ちゃんにも、私たち大人と同じように色々な病気が起こりえます。

病気の原因は、実にさまざまです。

染色体や遺伝子に問題があって起きるものもありますが、感染、薬害、放射線、その他原因不明なものまでさまざまなことが原因となることもあります。

これらをすべて合わせた、生まれた時に持っている病気を「先天性疾患」といいます。先天性疾患を持って生まれてくる赤ちゃんは、出生全体の3~5%といわれています。

そのうち、染色体異常症は新生児のおよそ0.6%に認められます。新生児の染色体異常症のうち、ダウン症候群(21トリソミー)、18トリソミー、13トリソミーが占める割合は2/3程度であると考えられています。

つまり、この検査を受けた結果が「異常なし」という結果であっても「正常な赤ちゃんが生まれてくる」ということとイコールではないということを理解しておく必要があります。

検査を受けるかどうかは、まず遺伝カウンセリングを受けてからじっくり検討することをお勧めします。検査自体は負担の少ないものですが、決して『気軽な検査』ではないということを理解しておいてください。

新型出生前診断が「命の選別につながる」かどうかは、私には分かりません。

しかし、私たちの願いは患者様の幸せです。患者様が自ら最善の道を選択して進んでいくことを応援しております。

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