妊娠中の検査、出生前診断についてお話しをしてきましたが、母体血清マーカー検査のトリプルマーカーテストやクアトロテストで調べられる、先天性疾患の一つである「神経管閉鎖障害」とは、どんな病気なのでしょう?

神経管閉鎖障害

「神経管閉鎖障害」とは、赤ちゃんの脳や脊髄のもとになる神経管の一部がうまく形成されず閉じなかったために、脳や脊髄が正常に機能しなくなる病気です。

子宮内の赤ちゃんの神経管(脳や脊髄のもとになるもの)は、妊娠6週ごろ(受精4週ごろ)に完成します。神経管は板のようなもので両端がくっついて閉鎖し神経管という管の形ができて、赤ちゃんの成長とともに頭の方は脳に、お尻の方は脊髄となります。

神経管閉鎖障害は、神経管の上部に異常が現れる「無脳症」と神経管の下部が塞がらないことで起こる「二分脊髄(にぶんせきつい)」に分けられます。
今回は、無脳症についてお話します。

無脳症とは

【無脳症】は、妊娠4~5週までに怒る神経管閉鎖障害・神経学的奇形症の一つで、赤ちゃんが生まれながら脳を持っていない症状です。
神経管の上部・頭側が塞がらなかったことで発生する病気です。神経管の形成が途中で止まってしまうため脳が作られず、頭蓋と大脳がない状態です。
お腹で育っているころから脳の発育が遅れている、あるいは妊娠8週ぐらいまではある程度発育しても、その後大脳が退化してしまい脳が成長しなくなります。
脳が小さい塊のように委縮してることもあります。
大脳だけでなく、脳幹と呼ばれる生命維持に不可欠な部分に影響が及こともあり、頭蓋骨の欠損、頭頂部の皮膚の欠損、脳の露出、眼球欠損や突出、口唇口蓋裂などの併発もあります。ある程度の脳が残存している症状は無頭蓋症とも言われます。
脳以外の臓器は異常がないこともありますが、重症なために流産や死産してしまうことが多いです。


日本での無脳症の発症率は約1000人に1人程のの割合で、そのうち75%が死産となり、 無事に出産する確率は25%、出生後も1週間以内の生存率はさらにそのなかのごくわずかです。
脳は全ての生命維持に関係するとても大切な機関で、その脳の欠損は出生後の生存率が極めて低く、脳の欠損の程度で予後の状態も左右されます。赤ちゃんが無脳症であるとわかっても母体内で生育できずに死亡してしまうケースが7割以上となり、残りのわずかな可能性で生れることができたとしても集中治療が必須な状態です。1年以上の生存は極めて稀であるとされており、日本ではそのような報告ないそうです。

無脳症と分かるタイミングと診断方法

超音波検査(エコー検査)により早くて妊娠8週目から妊娠14週ごろまでには診断ができます。
また、妊婦さんの血液検査でAFP(A-フェトプロテイン)が検出された場合、超音波検査と合わせて診ていきます。

無脳症を疑う場合の胎児の頭部の超音波検査(エコー)特徴は、頭部が小ぶりではっきりした丸みがなく、いびつであったり欠けていたり、頭部の周りがふわふわと動いているように見えたり、もやもやとしか映らないなど頭蓋骨がしっかり見えない、脳がむき出しになっている場合は頭部がハート型をしているなどの超音波所見があるそうです。 このような場合は、大学病院などでさらに診てもらうよう指示を受ける場合も多いようです 。

AFP(A-フェトプロテイン) は通常は肝臓がんの腫瘍マーカーとして使用されています。胎児の時にのみ肝臓で作られるタンパク質の一種です。肝臓がんになった場合を除いて通常健康な成人には無く、胎児の作る糖蛋白が羊水に混じるため、妊娠中はAFP値が上がります。妊娠早期の胎児と妊婦に検出されたAFP値は、胎児の値は出生後に減少していき1歳頃までにはほとんど消失します。妊婦のAFP値は妊娠6週頃から上がっていき、32週頃に最も高くなるとされています。400ng/mL以下であれば妊婦でも正常値で、それを超える値の場合には赤ちゃんの無脳症が疑われます。

あ母さんの症状

お腹の赤ちゃんが無脳児の場合、ほとんどの妊婦さんは妊娠中期までの自覚症状を感じません。妊娠後期に羊水過多症が多くなり、これは無脳症の影響で障害が脳幹部にまでおよぶと嚥下運動ができなくなるためと推測されています。羊水過多になると母体側はおなかが異常に大きくなり、肺が圧迫されることから妊婦さんは呼吸困難を起こすこともあります。また、妊娠後期の羊水過多症は血圧にも影響あり、早産になることもあります。多くの場合は母体の負担とその後を考慮し、人工的に陣痛を誘発して出産をする措置が取られることもあります。

赤ちゃんが無脳症と診断された場合、出産を選ぶ方は少ないようです。
無事に出産しても、生存率の低さと集中治療の必要性、妊娠継続による母体の危険を考量して中絶を選択する妊婦さんがほとんどと言われます。

神経管閉鎖障害は20~30%は遺伝的要因あるため、100%完全に予防することは難しいですが、葉酸の摂取により高確率でリスクを抑えることはできます。


次回は、もう一つの神経管閉鎖障害 「二分脊髄(にぶんせきつい)」についてお話していきます。



この記事の執筆者
立花 優里 Tachibana Yuri

看護師歴(25年)、2児の母

2児の母と看護師の経験から、子宝情報をお届けします

不妊検査コーディネーター、医療ライター

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