神経管閉鎖障害は、神経管の上部に異常が現れる「無脳症」と神経管の下部が塞がらないことで起こる「二分脊髄(にぶんせきつい)」に分けられます。

神経管閉鎖障害とは

「神経管閉鎖障害」とは、赤ちゃんの脳や脊髄のもとになる神経管の一部がうまく形成されず閉じなかったために、脳や脊髄が正常に機能しなくなる病気です。
子宮内の赤ちゃんの神経管(脳や脊髄のもとになるもの)は、妊娠6週ごろ(受精4週ごろ)に完成します。神経管は板のようなもので両端がくっついて閉鎖し神経管という管の形ができて、赤ちゃんの成長とともに頭の方は脳に、お尻の方は脊髄となります。
では、今回は二分脊椎についてお話していきましょう。

二分脊椎

二分脊椎には、顕在性(けんざいせい:神経が外に露出したもの)潜在性(せんざいせい:神経は外に露出しないも、神経以外のものを巻き込んでしまったもの)に分けられます。

顕在性二分脊椎が、脊髄髄膜瘤(せきずいずいまくりゅう)
潜在性二分脊椎が、脊髄脂肪種(せきずいしぼうしゅ)

二分脊椎の発生頻度は、過去30年間減少傾向を示していないそうです、日本国内の発生率は10000人に5~6人程です。年間500~600人ほどの患児が出生しています。

二分脊椎の発生には、次の3つの因子が強く関与していることがわかっています。
・栄養学的因子(葉酸接種不足)
・環境因子(糖尿病・肥満・てんかん薬の内服・妊娠前期の高熱発作・放射線被爆・ビタミンA過剰摂取・喫煙)
・遺伝的因子

顕在性二分脊椎「脊髄髄膜瘤」

症状は主に、水頭症・キアリ奇形・脊椎側弯、歩行障害、膀胱機能障害、排便障害などが主要な臨床症状です。
発症後は先天性奇形に基づく病気に対してそれぞれの対症療法が必要になります。
例えば、生後24時間以内に背部に露出した脊髄病変部の閉鎖手術を行い髄膜炎・神経の機能障害を防止します。
90%で水頭症の合併があり、水頭症が進むと、無気力・知能障害が起こるため、脳室の髄液をお腹に流してあげる、脳室腹腔内シャント手術が必要になります。
キアリ奇形は、過半数の患者で認められ、 脳幹機能障害のため 10%の患者に無呼吸発作・喘鳴・嚥下障害が起こります。高度に症状がでると、誤飲性肺炎・呼吸不全がおこり死亡にいたることもあります。
脊椎側弯・歩行障害などは下肢の変形・運動機能の低下などにより移動能力が大幅に低下します。
排尿・排泄の自立も難しく、症状に合わせた治療・ケアが生涯必要になります。軽度から中等度の知能障害も約半数の患児で発症します。
医療技術により、患者さんのQOLも大きく改善してきていますが、水頭症・排尿排便のケア・身体機能のリハビリテーションやケアは生涯大きく必要となり、医療や福祉のサポートが必要となります。

潜在性二分脊椎「脊髄脂肪種」

潜在性二分脊椎は、幼児期はあまり症状がわからず、学童期や思春期に症状が出てわかる場合もあります。腰のあたりで癒着した脊髄が身長の成長により引き延ばされ、転びやすくなったり、尿を漏らしたりなどがあります。


神経管形成時の分離障害が原因で発症し、分離が早期に起こり神経−皮膚間に脂肪細胞などが迷入すると脊髄脂肪腫となります。
脊髄髄膜瘤と異なり、葉酸による明らかな予防効果は証明さえていなく、
葉酸の効果があるのは、顕在性二分脊椎である脊髄髄膜瘤と無脳症と言われています。

この病気の症状として、皮膚症状、脊髄神経症状(下肢運動障害、感覚障害、 排尿障害、排便障害など、脊椎骨の異常、合併する脊髄以外の奇形(発生に異常のある生まれつきの 病気)による症状がみられます。
脊髄神経症状には、両下肢の運動・感覚障害、排尿障害(尿失禁、神経因性膀胱)、排便障害(頑固な便秘、便失禁)などがあります。 両下肢の 運動障害として、足が動かない(麻痺)、足の変形、左右の足が非対称、 足が細いなどがみられます。感覚障害として、靴ずれやその部の潰瘍、腰背部、下肢から足への放散痛や局所のしびれなどがあります。
生まれて間もない時は、これらの神経症状がなかったり、あってもみ つからないことがあります。現在のところ、一人ひとりの神経症状が、いつから 明らかになるのかは不明で、正確に予測することは難しいです。

発症時期は出生直後から成人期発症例まで、部位・脂肪腫の種類・大きさなどにより、大きな幅があり、 ほとんどの患児に 病変部の皮膚に異常所見があります。
代表的皮膚症状は脂肪による皮下腫瘤、血管腫、異常毛髪、皮膚洞、皮膚陥凹、皮膚の突起などで、皮下脂肪種に血管腫など複数の皮膚症状を伴うことも多いです。
下肢運動感覚(筋骨格系)障害は、脊髄脂肪腫患者の1/2-1/3あり、足関節内反、
下肢長の左右差、足底サイズの左右差、下肢難治性潰瘍形成、側弯症.歩容の変化、下肢筋力低下、疼痛などにより運動障害を生じてきます。
膀胱直腸障害では、神経因性膀胱が原因で繰り返す尿路感染、排尿困難、失禁、尿管の拡張、腎機能障害、便秘を合併し、膀胱直腸障害は、一度出現すると改善の可能性が最も低く、長期的な治療とケアが必要になります。

神経管閉鎖障害と葉酸

妊娠前から葉酸サプリメントを充分に内服すると、発生リスクは70~80%低減できると言われています。残る20~30%の症例は遺伝子異常が関係しているため100%の予防は難しいと言われています。

妊娠初期は神経管を元に脳や神経、心臓といった様々な器官が作られる時期になり、細胞の増殖に必要なDNAの合成を促す葉酸が多く必要となります。
葉酸はDNA・RNAの生合成、細胞分裂、細胞の成長など、人間の体の臓器の生成や組織の維持修復に必要になります。そのため胎児が大きく成長する時には特にその需要がたかまります。約半数の症例で血中の葉酸(ビタミンB9)が不足し、ホモシステイン濃度が上昇し、DNAの合成が障害され奇形が発症します。
妊娠初期に葉酸の摂取量が不足するか、葉酸の吸収・代謝を妨げるアルコールの大量摂取で、細胞分裂が滞り神経管閉鎖障害の発症リスクが高まります。

神経管は妊娠6週ごろに完成するため、妊娠がわかった時には、神経管はすでに完成するころになります。その為にも、妊娠前、妊活中から葉酸を摂取することで神経管閉鎖障害の発症リスクを低くすることができます。

神経管閉鎖障害の赤ちゃんを妊娠したことのある経産婦さんは、次の妊娠で再度、神経管閉鎖障害の発症リスクは、通常に比べて3~5倍も高くなります。
1991年にイギリスのビタミン研究グループが、神経管閉鎖障害の赤ちゃんを妊娠した経産婦さんに、1日当たり葉酸サプリを妊娠前4週~妊娠12週まで投与すると、神経管閉鎖障害の再発が、葉酸を投与しなかった対照群に比べて72%防止されることが判明したとのことです。

米国など40数か国は、穀類に葉酸の添加が義務図けられ、添加後の発生率を50%程減少させたと報告があるそうです。

葉酸とその他の病気

葉酸が神経管閉鎖障害の発症リスクを低下することは、知られていますが、その他にも、巨赤芽球性貧血の防止、口唇口蓋裂、先天性心疾患の発症リスクの低減。胎盤早期剥離や流産の防止する役割もあると言われています。冠動脈の再狭窄の防止、乳がん予防、アルツハイマー型認知症予防などに関連することもわかってきているそうです。

葉酸の効果があるのは、顕在性二分脊椎である脊髄髄膜瘤と無脳症です。
神経管閉鎖障害は20~30%は遺伝的要因あるため、100%完全に予防することは難しいですが、高確率でリスクを抑えることはできます。



この記事の執筆者
立花 優里 Tachibana Yuri

看護師歴(25年)、2児の母

2児の母と看護師の経験から、子宝情報をお届けします。
不妊クリニック様に不妊検査の営業をしております。

不妊検査コーディネーター、医療ライター

[PR]